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災害復興とそのミッション

著者:片山善博・津久井進
出版社:クリエイツかもがわ
定価:1,890円(本体価格1,800円)
判型:A5判、195ページ
ISBN-13: 978-4902244823
2007年8月刊
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憲法違反とまで言われながらも「住宅再建の支援策」を実施した片山善博鳥取県知事(当時・現在 慶應義塾大学教授)が、「復興のミッション(使命・任務)」という視点から災害復興と憲法を論じる。若き法律家 津久井進弁護士が憲法を再発見!

紹介して頂きました

津久井進先生著「災害復興とそのミッション」 」(2007.8.30弁護士村上英樹のブログ)

もくじ

1 災害復興のミッションとは何か  片山善博

誰のために、何の目的で―――

 任期八年/ミッションを忘れるな/災害復興はだれのために、何の目的で/ 公共事業のミッションを考える/議会のミッション/議員のミッション

災害復興のミッション―――

 被災者のために/現場主義・当事者主義をつらぬく/スピード感のある施策の実行/ 事前の準備――当事者のための訓練/「この際いいまちづくりを」をどう考えるべきか/ミッションの共有

鳥取県西部地震と住宅再建支援策―――

 仮設住宅政策と関連して出てきた住宅再建支援策/鳥取県の「住宅再建支援策発表」前後/被災者生活再建支援制度における「住宅支援」の扱われ方/その後の住宅再建支援をめぐる議論/住宅再建支援をめぐる最近の動きとそれへの対応

憲法のミッション―――

 この際、憲法のミッションをも考える/憲法=政府の横暴を制限する法律

2 復興基本法としての憲法  津久井進

災害復興基本法は憲法―――

 我が事として/復興基本法は憲法だ/伝えたいキーワード ―― 憲法と教育/都市ではなく人間に注目する/モノではなく生活を支援する/その地での暮らしを大切にする/災害弱者と格差拡大を無くす/国ではなく地域・市民が主導する/被災地復興法としての憲法/ 議会での発言

憲法の中の復興メニュー―――

 「損害の救済」をする請願権/苦しい時にこそ基本的人権/被災地が自分で決める/住宅への公費投入の可否/憲法違反ではない/私有財産制度に整合する/焼け太ったのは誰か/公費投入の制限/公平か実質的平等か/過去に学ぶべきこと/生存権は人権である/災害弱者/自己責任論/多様な住宅政策が必要/営業の支援

災害復興と自衛隊の役割―――

 国際平和と災害救助/自衛隊の役割/災害救助組織のあり方/国際貢献のあり方

ボランティアの役割―――

ボランティアの憲法的位置づけ/ボランティアは憲法的良心

復興と教育―――

 災害教育/災害研究/憲法教育

憲法の喪失前夜に―――

3 新しい災害復興システム  津久井進

復興の道標―――

 復興基本法とは何か/復興基本法の定義/法システムを体系化したい/財政的裏づけを確保したい/国民的運動を高めたい/災害対策基本法の成立過程/災害対策基本法で足りないことは何か/国の災害基金/災害救助法/災害救助法の何が問題なのか/被災者生活再建支援法/この法律はどんな法律か/住宅費への直接支出/支給要件の緩和/裏付けとなる財政措置/注目される改正の行方/新たなステージへ/復興基本法制への第一歩

※本書は、2007年3月24日に行われた「『災害復興ガイド』出版記念シンポジウム」(神戸市)での講演をもとに著者自身が加筆修正したものです。

まえがき

 この本を仕上げているときに、新潟県で大きな地震が発生してしまいました。新潟県中越沖地震です。新潟県は二〇〇四年にも新潟県中越地震に見舞われ、やっとその復興にめどがついたばかりだったというのに、またこのたびの大震災です。被災者の方々をはじめ関係者のみなさんの御苦労は察するに余りあります。

 鳥取県西部地震という大災害の復興に当たった私が最も苦労したのは、被災者にとって一番大切な住宅再建支援策の実施でした。それは、これに対する政府の猛反対があったからです。政府の人たちには、住宅再建支援の重要性をなかなか理解してもらえません。理解するより前に、屁理屈が先に出たり、過去の経緯やそれと深い関わりのある自分たちの面子に拘ったりするのです。

 どうすれば、現場に最もふさわしい災害復興の仕組みに変えることを、彼らが素直な気持ちで受け入れることができるのか。そのことを真剣に考えざるを得ませんでした。そこで出てきた結論は、災害復興のミッションを共有するということでした。ミッションとは、真の使命や任務という意味です。

 こんな経験を思い出していたときに、本年三月に兵庫県震災復興研究センターが主催する震災復興フォーラムで講演をするよう依頼を受けました。実をいうと、その講演の日時は私の知事退任の直前で、とても慌ただしい時期だったことから、お引き受けするのに少しためらいがありました。迷った挙句、でも快くお引き受けすることにしました。それは、災害復興のミッションについての私の考えを、阪神・淡路大震災の復興に苦しんできた神戸のみなさんに聞いていただけるまたとない機会になると考えたからです。

 当日、多忙を押してこのフォーラムに参加して本当によかったと思いました。それは、私の話を大勢の人に聞いてもらえたということももちろんありますが、それ以上に津久井進さんの話をみなさんと一緒に聞くことができたからです。新進気鋭のこの弁護士は、災害復興の基本理念を憲法の中に位置づけていました。日本国憲法が最も重視しているのは基本的人権の保障です。災害復興のあり方を、基本的人権の尊重を使命とする憲法から説き起こした津久井さんの講演内容は、日頃憲法の大切さを訴えている私にとって実に興味深く、示唆的でした。彼の話に触発されて、私は憲法自体のミッションについても持説をみなさんに聞いていただくことができました。これは津久井さんとのコラボレーションが生みだした大きな成果の一つです。

 このたび私と津久井さんの二人の講演を一冊の本にまとめることになりました。あのフォーラムの成果のすべてを多くのみなさんに共有していただけるようになったことは、二人にとってとても光栄なことです。ぜひ一人でも多くの方にこの本を手にとっていただき、災害復興に際して何が最も大切かということを、憲法のことも頭に入れたうえであらためて考えていただくよう願っています。

2007年8月
片山善博


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