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〈第2次提案〉能登半島地震における生活・住宅・コミュニティ再建に関する7項目提案

兵庫県震災復興研究センター

1.避難所としての、旅館・ホテル・施設の活用を

 厚生労働省は3月25日、「避難生活が必要となった高齢者、障害者等の要援護者については、旅館、ホテル等の避難所としての活用や緊急的措置として社会福祉施設への受入を行って差し支えない旨を石川県及び金沢市に通知」しましたが、この通知が実際に功を奏するまで少々時間がかかりました。

 穴水町の「キャッスル真名井」が受け入れたのが4月4日、輪島市門前町の「ビューサンセット」は発生から3週間ほどの時間を要したと言われています。

 今後の自然災害の被災地での避難所のあり方を考えれば、予め政府の避難所に関するガイドラインを全国の自治体に徹底しておくことが重要です。

2.住宅の応急修理にもっと支援を

 災害救助法第23条に基づく住宅の応急修理への支援金が今回、50万円に減額されています。

 従来は51万9000円であり、新潟県中越大震災の被災地には豪雪地帯であることから60万円に増額されていました。今回、なぜ減額されたのかの説明が必要であり、また少なくとも、従来並みに引き上げるべきだと思われます。

 応急修理に関して厚生労働大臣告示は「居室、炊事場及び便所等日常生活に必要最小限度の部分に対し、現物をもって行う」としていますが、現場の実態に即しているとは言えません。「現物支給」では緊急を要する事態に対応できず、非常に不便であり、「現金支給」に切り替えるべきです。

 また、応急修理は「半壊又は半焼」のみを対象としていますが、「全壊」でも修理可能な住宅が現実に存在していることを考慮すれば、「全壊」も対象に含めるべきです。

3.応急仮設住宅の入居は弾力的に

 応急仮設住宅は5月8日現在、10箇所で334戸が建設され、そのうち293戸に293世帯・669人が入居しています。

 能登半島地震被災地における応急仮設住宅では、台所、風呂・トイレ、集会所などの設備や入居選考などの面で、過去の震災の教訓が生かされています。

 ただし、「入居は2年限度」ということが強調され、被災者の先行き不安を掻き立てることになっている点は大きな問題です。

 実際、阪神・淡路大震災の応急仮設住宅は5年間使用され、新潟県中越大震災でもすでに3年目に入っていることを考慮すれば、能登半島地震においてのみいたずらに「2年限度」を強調することは理不尽であり、被災者に対して精神的圧迫を加えることとなり、避けるべきでしょう。

 応急仮設住宅での居住は、その後の恒久住宅の見通しが確保されなければ、一律に打ち切れるものではありません。国・自治体は、仮設住宅解消に先立って、恒久的な住宅再建についての具体的な支援策と復興方針を示し、被災者の不安解消に努めるべきです。

4.もとの暮らしを取り戻す住宅復興への支援を

(1)被災者の生活実態と地域コミュニティを配慮した復興公営住宅の建設

 恒久的な住宅確保にあたっては、被災者が望む限りもとの暮らしの回復を実現することを目標とすべきです。それには、被災者に資金的な余裕がある場合はともかく、資金的な力がなく高齢・病弱などの理由で身体的にも弱い立場にある人たちに対して、生活・住宅再建を公的に支援する方策が不可欠です。その際、復興公営住宅等が重要な政策手段となりますが、その建設・供給にあたっては、被災者(入居者)の孤立化や孤独死を招かないよう、従前の地域コミュニティを保全すべく、特別の配慮が必要です。

 ?復興公営住宅等の構造・建て方は、鉄筋コンクリートの共同住宅を不変の原則とするのでなく、木造や戸建て・長屋などの建て方、小規模分散型の配置などを含め、地域・集落の実情にあったものとする必要があります。

 ?高齢・病弱な単身者などの生活支援を念頭においた「グループホーム」的な公営住宅なども視野に入れる必要があります。

(2)自宅再建者への支援

 全半壊した自宅を、基本的に自力で再建する被災者に対して支援が求められます。これには、国の被災者生活再建支援法による居住安定支援制度がありますが、所得制限や使途の制約が大きく、住宅再建にとって限界があります。被災者の多くは、最初は「400万円の支援がある」と聞いて喜んだのですが、実は適用されない場合が多いとわかって失望したとのことです。被災者生活再建支援法の再改正が、急務となっていることを改めて指摘せずにはおれません。

 石川県はこの制度に100万円を上乗せする施策を打ち出しており、上乗せ分については所得制限をつけていません。この点は前進面として評価されるものですが、なお、全壊・半壊などの被害種別による区分が存在しています。

 鳥取県西部地震における鳥取県の住宅再建支援策では、被害程度による区分を設けず、迅速な支援が被災者を勇気づけ、結果として復興公営住宅(町村営)の建設は26戸で済んだという経験があります。こうした例に倣って、被害程度による区分を廃止した迅速な支援を検討すべきです。また、金額もせめて300万円程度まで増額することが望まれます。

【参考資料1】

           鳥取県西部地震(鳥取県分)  能登半島地震
   ○全  壊      391棟            590棟
   ○半  壊     2,472棟           1,170棟
   ○一部損壊     13,195棟          10,278棟
   ◎住宅支援策    300万円            100万円
   ○仮設住宅       28戸            334戸
   ○復興公営住宅     26戸(町村営)

【参考資料2】「能登半島地震の復旧・復興対策に関する関係省庁局長会議」における方針(4・20政府方針)・抜粋

■被災住宅の建築・補修に対する支援(国土交通省)
○公営住宅の建設や面的な居住環境整備などの基幹的な事業と、地方公共団体の創意工夫に基づく提案事業を一体的に支援する「地域住宅交付金」を平成17年度に創設しており、各地方公共団体の判断により、この提案事業を活用すれば、地域における住宅政策の一環として被災者の住宅再建支援を含めた事業の支援が可能。

■公的住宅(罹災者公営住宅等)建設への支援(国土交通省)
○・・・高齢者の方が安心して居住し続けるためには、住宅のバリアフリー化と併せて見守り機能の充実を図ることが必要であり、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震等においては、住宅施策と福祉施策の連携により、バリアフリー化された高齢者向け公営住宅に生活援助員(ライフサポートアドバイザー)を配置したシルバーハウジングの供給を進めてきたところ。 また、地域の実情に応じ、木造・戸建ての公営住宅の建設も可能となっている。

5.集落・コミュニティの核としての社寺の復旧・再興を

 能登半島地震の被災地ではおよそ600もの社寺があり、その相当数が被害を受けたと言われています。人口減少により檀家や氏子の少ない社寺が増えており、「自助・共助」だけでは社寺の復旧・再興がおぼつかないと危惧されています。

 社寺はもとより宗教施設ですが、観光施設・文化施設でもあり、また高齢者らの集いの場として利用されているという側面を強く持っています。

 例えば、総持寺祖院は、全国から修行にきた僧侶が輪島塗の食器を使い、それを全国に広めたことで知られています。歴史的に、輪島塗の文化の普及と総持寺は不可分のものでした。

現在でも、社寺は地域のコミュニティや文化の象徴であり、地域の人々の元気ややる気に直結する存在であると考えられます。また、地域の経済的活性化に関わる観光やグリーンツーリズムなどの資源としても活用できる大切な地域的財産でもあります。

 このような寺院や神社の復旧が遅れると祭りが再開できず、地域コミュニティが衰退するなど、取り返しがつかないことになる危険性が予想されます。

 能登半島地震の被災地で特別に重要な意味を持っている社寺の被害に対しては、各社寺の自力による再建努力は当然必要ですが、それに任せるだけでなく、復旧・再興への公的支援が強く望まれます。

 なお、「4・20政府方針」では「文化財の早期復旧は、文化庁としても喫緊の問題と認識している」として、すでに「国指定等文化財」「地方公共団体指定の文化財」は対象になっていますが、何れの指定にもなっていない文化財をも対象にする必要があります。

6.「能登半島地震被災中小企業再生のための復興支援ファンド」(300億円)の積極活用と対象拡大を

 石川県(2割程度負担)と中小企業基盤整備機構(8割程度負担)が、被災中小企業復興支援ファンドを組成し、石川県が行う、返済金利の無利子化、被災中小企業の建物・生産施設等に関する復旧支援、災害復興のための地場産品のPR等を支援することになりました。

 いち早い「復興支援ファンド」の組成は、被災中小企業にとっては一条の光とも言えるでしょう。ただ、先の現地調査では、地場産業(漆器、酒造)のない被災地ではこのファンドの支援対象にならないので、対象を拡大してほしい声があちこちから聞こえてきました。支援対象を限定せずに被災した中小商工業者すべてに支援を広げていくことが、復興を早めることにつながります。

 前項の「寺院・神社」が観光施設としての側面を持っていることに着目すれば、このファンドの支援メニューに組み込むことも考えられます。

 また、このファンドの目的は「中小企業再生」となっていますが、被災者の生活・住宅再建支援策もこのファンドの支援メニューに加えていくことも検討する必要があるでしょう。

7.内閣府の「被災者生活再建支援制度に関する検討会」は、能登半島地震被災地と被災者の聞き取り調査の実施を

 本年3月上旬から開始された内閣府の「被災者生活再建支援制度に関する検討会」は5月14日、その第2回会合(東京)で阪神・淡路や新潟県中越の関係者4人のヒアリングを行ないますが、今後、能登半島地震の被災地に赴いて被災者や被災自治体関係者の現場の声を是非とも聞き取りされることを要請いたします。

以 上

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