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+最新ニュース : 「借上公営住宅」の強制的退去を食い止めるために
投稿者: admin 投稿日時: 2015-7-22 15:26:16

2015年7月21日
「借上公営住宅」の強制的退去を食い止めるために
出口 俊一

1.新たな段階に入った「借上公営住宅」の強制的退去問題

 平成27年6月4日付にて久元喜造神戸市長名の「借上げに係る市営住宅の期間満了に伴う明渡しについて(通知)」という文書が、神戸市営キャナルタウンウェスト住宅1号棟〜3号棟の8世帯の入居者に内容証明郵便にて送付された事態を踏まえて、神戸市長宛に「要請書」(資料1)を提出したところ、7月7日、神戸市長名の回答(資料2)が届けられた。


【資料1】
2015年6月24日
神戸市長 久元喜造様
                                兵庫県震災復興研究センター
                                 事務局長 出口 俊一

「借上公営住宅」問題に関する要請書

 冠省。日頃の神戸市政の推進に感謝申し上げます。
 さて、「借上公営住宅」問題は、法制度上、信義則上、復興政策上、財政上、人権、人道、実態など様々な角度から検討しなければならないと考え、本問題が表面化して以来この5年間、兵庫県震災復興研究センターは、調査・研究と実践を重ね、神戸市会宛の「陳情書」提出や書籍(『大震災20年と復興災害』など)・資料にまとめて参りました。
 そこで、「借上公営住宅」問題に関しまして、下記の通り要請致します。

−記−

1. 平成27年6月4日付にて久元喜造神戸市長名の「借上げに係る市営住宅の期間満了に伴う明渡しについて(通知)」という文書が、神戸市営キャナルタウンウェスト住宅1号棟〜3号棟の8世帯の入居者に内容証明郵便にて送付されました。

  同通知では、神戸市の権限の根拠や義務が明記されている「(1)公営住宅法第32条第5項及び神戸市営住宅条例第50条第12項、(2)同法第32条第6項及び同条例第50条第13項、(3)借地借家法第34条第1項」に基づいて明渡しの事前通知がなされています。

  借上げ住宅に関する今回のような明渡し請求は、入居時の手続きが公営住宅法に基づいて履行されている場合に根拠が発生するのですが、入居にあたって「事業主体の長は、借上げに係る公営住宅の入居者を決定したときは、当該入居者に対し、当該公営住宅の借上げの期間の満了時に当該公営住宅を明け渡さなければならない旨を通知しなければない」(公営住宅法第25条第2項)にもかかわらず、この「通知」はなされませんでした。
  また、「既存民間住宅を活用した借上公営住宅の供給の促進に関するガイドライン(案)」(平成21年5月、国土交通省住宅局住宅総合整備課)においても「入居者への決定に当たっては、公営住宅法第25条第2項の規定に基づき、当該入居者に対し、当該公営住宅の借上げ期間の満了時に当該公営住宅を明け渡さなければならない旨を通知しなければならない。通知に当たっては、借上期間の具体的な満了時期及び借上期間満了時に当該公営住宅を明け渡さなければならないことの2つの事項を含む必要がある」と明記されています。

  入居にあたってのこの「期間の満了時に・・・明け渡さなければならない旨の通知」がなされなかったということは、「事業主体の長」の義務の不履行ゆえ手続き的瑕疵があり、そもそも「借上げ住宅」ではなかったと言うこともできます。

  今回の20年期限の強制的退去の根拠は、公営住宅法第1条から第54条の条文のどこを探しても見当たりません。神戸市が20年期限の強制的退去の政策を打ち出したのは、平成22年6月に策定した「第2次マネジメント計画」でした。神戸市の政策変更により、現在のような入居者の居住の権利を奪うような事態が惹起されています。
  そもそも公営住宅法の目的は、「国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与すること」(同法第1条)であって、強制的退去を根拠づける内容にはなっていません。

  この点につき、久元市長のご見解をお尋ね致します。

2. 本問題につき、久元市長と公開の面談の場で、意見交換をさせていただきたいと考えております。大変お忙しいとは存じますが、よろしくお取り計らいをいただきますようお願い申し上げます。

                                 以上

                       【連絡先】
                        兵庫県震災復興研究センター
                        653-0041
                        神戸市長田区久保町7丁目4番10号
                        電 話:078(691)4593
                        FAX:078(691)5985
                        Eメール:td02-hrq@kh.rim.or.jp
                        ホームページ:http://www.shinsaiken.jp/

≪資 料≫

(1)【公営住宅法】(昭和26年6月4日法律第193号)
(この法律の目的)
第一条  この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする。

(公営住宅の家賃に係る国の補助)
第十七条  国は、第七条第一項若しくは第八条第三項の規定による国の補助を受けて建設若しくは買取りをした公営住宅又は都道府県計画に基づいて借上げをした公営住宅について、事業主体が前条第一項本文の規定に基づき家賃を定める場合においては、政令で定めるところにより、当該公営住宅の管理の開始の日から起算して五年以上二十年以内で政令で定める期間、毎年度、予算の範囲内において、当該公営住宅の近傍同種の住宅の家賃の額から入居者負担基準額を控除した額に二分の一を乗じて得た額を補助するものとする。

(入居者の選考等)
第二十五条  事業主体の長は、入居の申込みをした者の数が入居させるべき公営住宅の戸数を超える場合においては、住宅に困窮する実情を調査して、政令で定める選考基準に従い、条例で定めるところにより、公正な方法で選考して、当該公営住宅の入居者を決定しなければならない。
2  事業主体の長は、借上げに係る公営住宅の入居者を決定したときは、当該入居者に対し、当該公営住宅の借上げの期間の満了時に当該公営住宅を明け渡さなければならない旨を通知しなければならない。

(公営住宅の明渡し)
第三十二条  事業主体は、次の各号のいずれかに該当する場合においては、入居者に対して、公営住宅の明渡しを請求することができる。
一  入居者が不正の行為によつて入居したとき。
二  入居者が家賃を三月以上滞納したとき。
三  入居者が公営住宅又は共同施設を故意に毀損したとき。
四  入居者が第二十七条第一項から第五項までの規定に違反したとき。
五  入居者が第四十八条の規定に基づく条例に違反したとき。
六  公営住宅の借上げの期間が満了するとき。
2  公営住宅の入居者は、前項の請求を受けたときは、速やかに当該公営住宅を明け渡さなければならない。
3  事業主体は、第一項第一号の規定に該当することにより同項の請求を行つたときは、当該請求を受けた者に対して、入居した日から請求の日までの期間については、近傍同種の住宅の家賃の額とそれまでに支払を受けた家賃の額との差額に年五分の割合による支払期後の利息を付した額の金銭を、請求の日の翌日から当該公営住宅の明渡しを行う日までの期間については、毎月、近傍同種の住宅の家賃の額の二倍に相当する額以下の金銭を徴収することができる。
4  前項の規定は、第一項第二号から第五号までの規定に該当することにより事業主体が当該入居者に損害賠償の請求をすることを妨げるものではない。
5  事業主体が第一項第六号の規定に該当することにより同項の請求を行う場合には、当該請求を行う日の六月前までに、当該入居者にその旨の通知をしなければならない。
6  事業主体は、公営住宅の借上げに係る契約が終了する場合には、当該公営住宅の賃貸人に代わつて、入居者に借地借家法(平成三年法律第九十号)第三十四条第一項 の通知をすることができる。



(2)【公営住宅法施行令】(昭和26(1951)年6月)
(公営住宅の家賃に係る国の補助)
第四条
2 法第17条第1項、第2項又は第3項に規定する政令で定める期間は、事業主体が建設又は買取りをした公営住宅にあつては20年(事業主体が当該公営住宅の建設等に必要な土地の所有権、地上権又は土地の貸借権を新たに取得せずに建設又は買取りをした公営住宅にあつては、10年)と、事業主体が借上げをした公営住宅にあつては当該公営住宅の借上げの期間とする。

(3)【民法】(明治31(1898)年7月施行)
(賃貸借の存続期間)
第六〇四条 賃貸借ノ存続期間ハ20年ヲ超ユルコトヲ得ス若し之ヨリ長キ期間ヲ以テ賃貸借ヲ為シタルトキハ其期間ハ之ヲ20年ニ短縮ス

(4)【借地借家法】(平成4(1992)年8月施行)
(建物賃貸借の期間)
第二九条
2 民法六〇四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない。(平成11法153 本項追加)

(5)【既存民間住宅を活用した借上公営住宅の供給の促進に関するガイドライン(案)】
  (平成21年5月、国土交通省住宅局住宅総合整備課)
 7)入居者への入居決定通知
  ○ 入居者への決定に当たっては、公営住宅法第25条第2項の規定に基づき、当該入居者に対し、当該公営住宅の借上げ期間の満了時に当該公営住宅を明け渡さなければならない旨を通知しなければならない。通知に当たっては、借上期間の具体的な満了時期及び借上期間満了時に当該公公営住宅を明け渡さなければならないことの2つの事項を含む必要がある。


【資料2】
2.入居時に適正手続きを欠いた自治体

 7月7日付の神戸市長の「回答」を踏まえ、7月14日午前、神戸市住宅整備課と交渉した。以下は、その交渉メモである。

 ◎日 時:2015年7月14日(火)午前9時55分〜11時35分
 ◎場 所:神戸市役所3号館2階会議室
 ◎参加者:・震災研究センター⇒高田富三(常任理事)、小川 昭(常任理事)、
                吉山隆生(キャナルタウン入居者)、荒木直人(支援者)、
                出口俊一(事務局長)/5人
・神戸市⇒上山裕之(計画調査担当課長) 、垣内創一(調査担当係長) 
ほか職員(1人)/3人
・取材⇒久野 洋(毎日新聞記者)、北野篤史(関西テレビ記者)/2人

 ◎震災研究センターの主張のポイントと神戸市の回答
  1.兵庫県震災復興研究センターが久元喜造神戸市長宛に提出した「要請書」(6月24日付)では、「公開の面談の場」を要請したにもかかわらず、7月7付にて文書回答が届けられた。 誠意がなく、残念である。「借上公営住宅」の強制的退去政策が表面化して以来この5年間、誤った政策の中止と入居者の継続入居を求めてきた一人として、不誠実な神戸市長の対応に抗議するとともに、改めて神戸市長の見解を聞き、政治決断を求めていきたい。

2.回答の内容について、当震災研究センターの要請にはまともに答えておらず、神戸市の方針を長々と説明している。内容面においても誠意がない。
  (1)回答は、「被災世帯の割合が既に半数を下回っていること」を指摘しているが、そもそもこれは神戸市の制度設計、つまり「20年間、棟借り」という契約を結んだということに問題が内在していたことである。制度設計をした神戸市に責任がある問題である。入居者には全く関係のないことを持ち出すことは、不誠実で無責任である。「当初の目的と現状の乖離」を作り出したのは、神戸市自身である。
 なお、この問題についてはかつて交渉の席上で当方から、「いまからでも神戸市と家主との契約変更をして負担を軽減する方策を」と提案したことがある。実際、昨年末から「コミュニティ春日野」とは契約変更をして空き住戸の返還を始めたのではなかったのか。
 この問題を、借上住宅を20年で終了する理由に挙げることはすべきではない。議会答弁などでもこのことに言及することは止めるべきだ。

(神戸市)
 URの一部は、当初からバラ借りをしており、13住宅のバラ借り分は返却し、終了した。

 (2)回答は、「借上料について、入居者の皆様からの使用料や国の補助だけでは不足するため市民全体の税負担により補わなければならないという状況」と記しているが、そもそも「借上公営住宅」は、公営住宅法に基づく制度であり、かつ復興施策であるので、すべて税負担をしなければならないのであるから、「市民全体の税負担」との表現にて、問題があるかのような記述は、法制度の無理解か意図的な表現で誤りである。
矢田立郎前市長はかつて、新年の記者会見で「借上住宅には、こんなにもお金がかかっているんですよ」と長々と説明したことがあるが、これは公営住宅法そのものを否定する暴論であった。公営住宅は、国民の「税負担」によって日本国憲法25条を実効あるものにしているのである。
また、財政問題を検討するのであれば、「借上方式」と「直接建設方式」を比較した上で、議論をしなければならない。かつて当方が神戸市会宛の「陳情書」でこの問題を問うた時に、当時の都市計画部長は「両者の比較検討する意義はない」として、まともに答えなかったが、改めてこの両者の比較を明らかにしなければならない。この問題については現在、情報公開請求をしている。

(神戸市)
 比較したことは、ある。情報公開請求をされているので、探しているところ。

 (3)回答はまた、「公平性の観点」と記しているが、何と比較しているのであろうか。神戸市の文書では「その後の住宅困窮者」との比較をしたことがあるが、「その後の住宅困窮者」に神戸市は独自の施策をしたのであろうか。当方は、大震災5年の時点で、「二重ローンの被災者に公的支援を」神戸市に提言したことがあるが、神戸市は「現行の制度では、できません。復興基金の方に求めて下さい」と極めて冷淡な姿勢であった。「その後の住宅困窮者」と比較して公平性を欠くというのは、何もしてこなかった無策を吐露したことであり、そもそも「その後の住宅困窮者」と比較すること自体、誤っている。
なお、当方から公平性のことで指摘してきたことは、?期限のない復興公営住宅の入居者、?年齢などによる線引き、などと比較すれば明らかに不公平が生じていることである。

(神戸市)
 文書の中で、どのように記述したかは、いま手元に資料がないので、はっきりとは言えない・・・。

 (4)回答には「予約申込みをしていただけない場合は移転期限の猶予が適用されず、原則どおり、現在の借上期間の満了をもって住宅の明渡し」云々と、脅し・脅迫の類の表現がなされている。この種の内容を今回、「神戸市営住宅条例の一部改正」で、条例に位置づけようとしているが、とんでもないことである。

(神戸市)
 (4)については、言及なし。

(5)回答は、「御指摘いただいております公営住宅法第25条と第32条の関係につきまして国土交通省に確認したところ、公営住宅法第25条第2項の事前通知は、同法第32条の明渡請求の前提条件ではないとの見解を確認しております」と記しているが、この件7月9日(木)午後、国土交通省住宅総合整備課・法令担当の斎藤係長に電話にてお尋ねをした。
    斎藤係長の見解の骨子は、次の通り。
?神戸市から問い合わせがあったので、「前提条件ではない」との見解はお伝えしましたがそんなところに使われたのは、ただいま知りました。裁判になって司法がどのように判断されるかはわかりませんが、最初の段階で手続き面で問題があったとすれば、(同法25条2項は義務規定ですねとの出口の質問には)義務が果たされなかったことになりますね。
?(公営住宅法の法文には、20年で退去しなければならない規定は存在しませんね、との出口の問いに)同法には、存在しません。(国庫補助の期間ですね、との出口の問いに)その通りです。
?(借地借家法の改正で上限20年はなくなっていますね、との出口の問いに)そうです。
?(自治体は、借上公営住宅と言明しているが、実は、借上ではなかったとも言えますね、との出口の問いに)それは・・・・・。やはり借上なんだと考えます。
?(今、阪神の被災地で起こっているこの問題について国として何かできるかどうかとの出口の問いに)自治体がされることにいちいち口出すことはできませんので・・・・・・。
?(神戸市長の回答は、見ていないとのことでしたので、お送りしましょうかとの出口の意見に対して)では、ファクスでお願いします。

「前提条件ではない」との見解の神戸市の引用は、自らに都合のいいように引用したに過ぎないことがわかり、義務規定を履行しなかったことは明白。「前提条件ではない」と言っているが、あまりそのことを強調することは、法律を無視する姿勢を示すことになる。適正な手続きを欠いているので、つまり、「法律の定める手続きによらなければ、・・・自由は・・・奪われない」との条項を認識しているはず(課長は、頷く)。公営住宅法25条2項に違反は、明白である。自治体の義務を履行しないで、追い出しばかり推進するのは、常識に反している。

(神戸市)
見解は、電話ではなく、国土交通省住宅総合整備課に赴き、江原担当課長補佐に直接伺った。15%の住宅には通知をしなかった。85%には、通知をした。平成22年(2010年)から説明をしている。

(6)回答には「キャナルタウンウェスト住宅1〜3号棟につきましては、・・・平成8年8月の公営住宅法の改正で借上げ方式が導入される前に国の要綱に基づいて供給したもの」との記述があるが、この問題についての手続き等については、より詳しく法的根拠を明らかにしなければならない。

(神戸市)
 要綱などは、情報公開請求をしていただければ・・・。

(7)繰り返すが、改めて神戸市長の見解を聞き、政治決断を求めていきたいので、「公開の面談」を強く要請する。(課長は、文書で回答しましたので・・・と繰り返したが)、今、課長の見解を聞いているのではない。今日の遣り取りを久元市長に報告していただいた上で、改めて市長の判断を聞きたいと言っているのであるから、持ち帰っていただきたい。

  (神戸市)
   わかりました。


現在、神戸市長宛に公文書公開請求をしている内容は、以下の通りです。

 ◆7月6日(月)午前、神戸市宛の情報公開請求書を提出(15日以内に回答)
  ⇒7月17日(金)に公開。7月21日(火)に受領。
  ?借上住宅決算値
  ?借上住宅管理状況(区別、年齢別、管理戸数、入居戸数、65歳以上単身世帯数、単身高齢世帯率)
   の直近のデータ
  ?この間の退去世帯数(退去、死亡等内訳別)の直近のデータ
  ?本制度の制度設計にあたっての「借上」と「直接建設方式」の費用の試算、1戸あたりの試算を
   含む。
  ?借上住宅入居時に、公営住宅法に基づく退去時の説明又は通知が存在するとすれば、それに該当
   する文書。

 ◆7月16日(木)午前、神戸市宛の情報公開請求書を提出(15日以内に回答)
  ?公営住宅法改正前の国の「要綱」と根拠法令
  ?国土交通省住宅総合整備課に赴いて直接、聴いた日時、参加者、内容などを記した報告書または
   メモ
























































































































































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